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第6章 ドイツにおける市民セクター活動

−社会福祉領域を中心に−

 

縣公一郎

 

1. はじめに−本章の目的と方法

 

本章は、NPO論議が盛り上がりを見せている日本にとって、ドイツにおけるこの分野での展開からどのような観点を学び得るかについて、概観する事を目的としている。ドイツでは、NPOという概念は、日本ほど普及しておらず、むしろ公益社団(gemeimutzigerVerein)、もしくは無償公益杜団(feigemeinnutziger Vereon)という概念の方が、一般的である1)。また、営利法人が公益性のある活動を行う場合にも、公益団体としての処遇に浴する事ができる。そこで本章では、日本でNPOと称されている団体を、便宜上公益法人という概念で纏める事としたい。
日本にとって注目に値する点として、結論として言えば、ドイツの公益法人制度が簡素であり、当該法人の追求する目的とは関係なく一元的認可に基づいている点、および、行政からの直接補助金が活用され、しかも認可と補助金が分離している点が、重要だろう。
これらの点を詳らかにするために、ドイツの公益法人制度一般を概説した上で、ドイツで公益法人が最も活動を展開しているとされる社会福祉領域を取り上げて、法人と行政の関係を具体例に則して考察したい。ドイツにおける社会福祉事業のうち、行政自身が給付するのではなく、民間団体が担当する部分を、無償社会福祉(feie Wohlfahrtspnege)、及び自助福祉(soziale Selbsthilfe)と称し、区別している。無償社会福祉の定義としては、他者を援助し、援助対象が閉鎖的グループではなく、事業者の組織構造が高度に確立され、法律によって規定される部分が多く、国民経済統計上単独部門として計上されるという、少なくとも5つの観点が特徴となっている、他方自助福祉は、無償社会福祉とは対照的に、比較的組織構造の緩慢な閉鎖的グループが、自助のために福祉活動を実施する場合を意味し、法律から規定される部分が少なく、国民経済統計上も考慮されていない2)。両者は、こうした差異があるものの、ドイツでは、公益活動の一分野として繧めて捉えられている場合が多い。そこで、社会福祉領域での具体的な活動状況を紹介し、公益法人制度の成果を観察したい。

 

 

 

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